（2020年4月30日に書かれたコラムです）

都市の開発が進むと、新しい建物が増える半面、古き良き建物が失われていくこともあります。

ここで福井市からのニュースです。

福井駅では西側にある通称「三角地帯」と呼ばれる地域が再開発の対象地域となっており、そこにある「福井まちなか文化施設 響のホール」も閉館となることが決まりました。 今回の閉館は北陸新幹線福井駅開業に向けた西側地域の再開発に伴うもので、運営主体である第3セクター「まちづくり福井」が4月27日に発表しました。

この「響のホール」は、2004年（平成16年）、福井市が購入した旧山一證券ビルの跡地を活用してオープンし、地上6階・地下1階建て。224席の多目的ホールや音楽スタジオ、パフォーミングボックス（小ホール）、会議室、カフェなどの施設が収容されています。

この施設は、16年間「まちなかの文化・情報複合施設」というコンセプトの下で市民に親しまれた場所であり、スタンディング形式の設営もできるホール構造になっていること、福井駅西口から徒歩3分という好立地から、レキシ、東京スカパラダイスオーケストラ、ザ・クロマニヨンズ、くるり、RADWIMPS、渡辺美里、KANなど著名アーティストの全国ツアー会場としても使用されました。

コロナの感染拡大により、予定されていたイベントは相次いで中止となっており、音響スタッフなどは在宅勤務などを余儀なくされている状況で、5月6日までは全館臨時休館となっていますが、館内各施設の営業終了予定日は5月下旬～6月下旬となっており、秋以降には取り壊しが予定されています。

関係者によるとホールやスタジオ機能は再開発されるビルに分配配置される見込みですが、現状のホールのような本格的な音響施設を備えた施設にはならない見込みだそうです。

少なからず言えるのは、この16年間、福井駅前に根付いてきた音楽や表現の潮流は、この開発に途絶えてしまうのだと言うこと。再開発がもたらすのは、本当の豊かさなのか。便利さを追い求めることで、芸術のよりどころを失くしてしまうのは、本当に勿体ないことだと思います。


 執筆：街コミNAVI編集部