（2018年3月29日に書かれたコラムです）

神戸新聞からのニュースです。

オーストリアで保管されていた明治初期の古い写真のコレクションの中に、神戸で写真館を営んでいた神戸在住の写真師「市田左右太（そうた)」さん撮影のネガが含まれていることが分かったそうです。

今月出版された写真集「高精細画像でよみがえる150年前の幕末・明治初期日本」で紹介されており、当時の神戸の街の風景などを垣間見ることができます。 元・神戸市立博物館学芸員の田井玲子さんは「関西第一の大家と言われながら早世した、地元神戸の偉人が再評価される機会になれば」と撮影ネガの発見と出版を喜んでいます。

手がかりとなったのは、写真の中の男性が着ている印ばんてん。

拡大すると襟に「神港 市田」の文字が読み取れ、神戸市立博物館が所蔵する市田さん撮影の須磨寺の写真にも同じ印ばんてんが写っていたことが、有力な裏付けとなったそうです。男性は1870年に開業した市田写真館の雇い人と見られます。

これまで市田さんの名前が写真史で大きく取り上げられることはなく、神戸市立博物館学芸員時代に市田さんについて研究していた田井さんは「今回出版の写真集が広く世に出ることで、さらに資料の発掘が進めば」と期待しています。写真集「高精細画像でよみがえる150年前の幕末・明治初期日本」は洋泉社から刊行。

343ページ、5940円で発売されています。

海外に散逸している資料から、撮影者などが特定できるのはなかなか稀な例だと思いますが、これをきっかけに市田さんについての研究が進めば良いなあと思います。


 執筆：街コミNAVI編集部