北見市の小学校では、プールの老朽化が深刻な問題となっています。市教育委員会が2023年5月に実施した調査によれば、市内の18校にあるプールのうち、8校で鉄骨の劣化が著しく見られ、その年の夏にはプールの使用が中止されました。

その後、残りの10校に対しても詳しい調査が行われ、6校でコンクリートの劣化、他の2校で鉄骨の劣化が確認されました。結果として、16校のプールが使用不可となりました。

教育委員会の対応策

教育委員会は、この問題に対して以下のような対応策を講じています。使用不可となった学校の水泳授業については、市営プールや他の施設を利用して実施することを決定しました。

具体的には、北見市民温水プール、常呂町健康温水プール、訓子府町温水プールなどで水泳授業が行われます。授業回数は全学年原則2回（各3時間）と設定されています。

今後の見通し

市教育委員会は、プールの全面改築には多額の費用がかかるため、改築を行わない方針も併せて決めました。劣化が確認されなかった端野小学校と留辺蘂小学校の2校については、引き続き学校のプールで水泳授業を行う予定です。

佐々木賢一学校教育部長は、「学校プールを個々に維持するのは行政としてハードルが高いため、既存のプール施設を最大限活用して水泳授業を行っていきたい」と理解を求めています。

プールの老朽化問題は、単に設備の劣化だけでなく、地域社会全体の教育環境の質を問う問題です。

プールは単なる水泳の授業の場ではなく、子どもたちが安全に楽しく学ぶための重要な教育資源です。したがって、プールの維持管理は、教育委員会や学校だけでなく、地域社会全体で取り組むべき課題といえます。

まず、地域住民や保護者が積極的に意見を出し合い、支援する体制を作ることが重要です。例えば、地域コミュニティが中心となって資金を集めるクラウドファンディングの実施や、ボランティアによる維持管理のサポートなど、多様な方法があります。

これにより、子どもたちが安心して学べる環境を持続的に確保することが可能となります。

また、行政も柔軟な対応が求められます。既存施設の最大限の活用はもちろん、新たな財源確保のための施策を講じることも必要です。例えば、企業や団体からの寄付を募るなどの取り組みも考えられます。さらに、プールの利用価値を高めるために、地域の住民が利用できる場として開放し、地域全体で施設を共有することも一つの解決策です。

今こそ地域コミュニティの力

プールの老朽化問題を地域活性化の契機として捉える視点も重要です。北見市は、地域の結束力が強いことで知られています。この特性を活かし、地域全体でプールの維持管理に取り組むプロジェクトを立ち上げることができます。

例えば、地域住民や地元企業が協力して資金を調達し、プールの修繕や運営を支援する仕組みを作ることです。

さらに、地域の文化や伝統を活かしたイベントをプールで開催することで、地域の魅力を発信し、観光資源として活用することも考えられます。夏季にはプールでの地域交流イベントや、冬季にはアイススケートリンクとして利用するなど、季節に応じた多目的利用が可能です。

このように、プールの老朽化問題は、多様な視点からのアプローチが求められます。北見市の取り組みが他の地域にとっても参考となり、全国的な教育環境の改善につながることを期待したいと思います。


 執筆：街コミNAVI編集部