社会医療法人製鉄記念室蘭病院は、2018年9月に胆振地域で初めて最新機種の「ダヴィンチXi」を導入し、以来、ロボット支援手術を積極的に行っています。この度、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による手術実績が800例を超え、特に呼吸器外科での実績が道内最多の約350例（2024年3月時点）に達しました。

ダヴィンチ導入の経緯と技術的特徴

製鉄記念室蘭病院は、2019年3月より前立腺がんの手術を皮切りに、肺がん、大腸がん、腎がんなど多岐にわたる手術に「ダヴィンチXi」を活用しています。ダヴィンチXiは高精細な3D映像を提供し、最大10倍まで拡大可能な映像により、繊細な組織構造を明瞭に観察できます。また、7つの関節を持つロボット鉗子は、術者の手の動きを正確に再現し、手ぶれ補正機能により極めて精密な操作が可能です。

患者への負担軽減と手術のメリット

ダヴィンチ手術は、従来の開腹手術に比べて出血量が少なく、傷口も小さいため、術後の痛みが軽減され、早期の回復が期待できます。さらに、拡大視野での手術により、細かい血管や神経、臓器の境目を的確に確認でき、機能温存が期待できます。

医療ツーリズムの新たな可能性、ロボット手術が地域社会にもたらす広範な影響

ロボット手術の普及が地域社会にもたらす影響は、単に医療技術の進歩にとどまりません。例えば、製鉄記念室蘭病院のような地方病院が最新の医療技術を導入することで、その地域全体の魅力が向上し、医療ツーリズムの新たな可能性を開くことができます。遠方からの患者がこの高度医療を受けるために訪れることで、地域経済の活性化も期待されます。

また、医療技術の進歩は地域住民の健康意識向上にも寄与します。高度な手術が身近な病院で受けられることを知ることで、早期診断や早期治療の重要性が広く認識されるようになります。これにより、地域全体の健康水準が向上し、医療費の削減や生活の質の向上といった長期的な効果も期待できます。

さらに、ロボット手術の導入に伴う医療従事者のスキル向上は、地域全体の医療水準の底上げにつながります。高度な技術を持つ医師や看護師が増えることで、他の診療科や医療施設でも質の高い医療サービスが提供されるようになります。これにより、地域全体がより安心して生活できる医療環境が整うでしょう。

国における医療支援を改めて考える、医療福祉の予算の使い方

製鉄記念室蘭病院が示すように、地方病院でも高度な医療技術を導入し、成功させることが可能です。しかし、そのためには持続的な投資と支援が必要です。地方自治体や政府が地域医療の重要性を認識し、適切な支援を行うことが求められます。

また、医療技術の進歩には常に新たな課題が伴います。ロボット手術の普及に伴うコストの問題や、機械依存のリスク、医療スタッフのトレーニング体制の整備など、多くの課題が存在します。これらの課題に対しても、製鉄記念室蘭病院のような先進的な取り組みが全国的なモデルケースとなり、解決への道筋を示していくことが期待されます。

製鉄記念室蘭病院のダヴィンチ手術の成功は、単なる医療技術の進歩にとどまらず、地域社会全体の健康と福祉の向上に貢献する革新的な事例として、他の医療機関にとっても参考となるでしょう。


 執筆：街コミNAVI編集部