3月4日から5日までの2日間、鹿沼市板荷で「アンバ様」が行われていました。 この「アンバ様」とは、江戸後期から続く伝統行事で、おみこしに乗ったアンバ様が旧板荷村の240軒を回るものです。

もともとは漁村で信仰される神様であるアンバ様は、大杉大明神とも言われ、船霊様の親神とも言われる女体の神様です。大杉神社は茨城県稲敷市阿波にありますが、鹿沼市板荷でもこのアンバ様を祀った祭りが毎年、春先に行われています。 おみこしを先導するのは大天狗・小天狗で、各家庭を回りながら悪魔祓いと、春の事触（ことぶれ）、つまり春が来たことのお知らせを行います。

さらに、おみこしの後には屋台が続いて大杉囃子を演じつつ、鹿沼市板荷中を練り歩きます。 なんともにぎやかな行列ですが、240軒を回るのは大変そうな気もします。

家では天狗が「アンバ様大杉大明神、悪魔払ってヨイのヨイのヨイ」と唱えて、家から追い払った悪魔を獅子が食べることで家内安全を祈願しました。

このお祭りは古くは江戸時代の疫病を受けて、大杉神社に祭神の分霊を迎えたことから始まっており、今では鹿沼市の指定無形民俗文化財とされています。こうして鹿沼のアンバ様は、悪病退散の神様としてであるほかにも、村内安全の神、水神として地元で長く愛されてきた神様というわけです。

「地元の神様」は、現代の都市に暮らす者は縁遠いものですが、こうして各地のお祭りの中に残っているのを見るとうらやましくも感じますね。


 執筆：街コミNAVI編集部