アユと言えば、岐阜や高知を思い出す人もいるでしょうが、実は日本の風土であれば川の綺麗な場所ならば、どこでも棲息できるそうです。しっかりした美しい身と、深い味わいは塩焼きにすると丸ごと味わうことができますよね。

さて、そんなアユの遡上が風物詩なのが、八代海へそそぐ球磨川の河口付近。つまり熊本県南の八代市なのです。 あまりアユのイメージがないこの土地ですが、この時期になると河口から5キロほど遡った堰では体長7センチほどの稚アユが、人工の魚道へと導かれてぐんぐん上流へと泳いでいるのです。

時には川の流れに逆らってぴょんぴょんとはねながら、八代の階段状になった櫃をどんどん上っていく姿は力強く、なんだかかわいい気もします。

ダムや堰を乗り越えられなかったアユはなんと漁協によって掬い上げられ、トラックで八代の玉磨川上流へと輸送された上で放流されます。今年は35万尾以上がすでに放流されたということです。

アユ漁に詳しくない者からしてみれば、アユをいったんとらえた上で放流するというのは二度手間のように思えてしまうのですが、これもアユの習性と生態をよく考えてのこと。景観や水質保全のためには川を完全に天然のままにしておくことはできませんし、かといってその川を遡れないアユをそのままに放っておくわけにもいきません。こうやって人間の手を入れてなんとかお互いのためにいい解決策を導き出したということなのです。

熊本でアユが食卓に並んだ際には、是非こうした漁の苦労を考えながら食べてみてください。


 執筆：街コミNAVI編集部